ウイスキーと言えば「スコッチ」と最初に頭に浮かぶ程、世界の代表的なウイスキー産地であることを疑う人は居ないでしょう。しかし、簡単にスコッチウイスキーと言いますが、定義上は、スコットランドの蒸溜所で蒸留され、スコットランドの限定された場所のみで3年以上の熟成をされ、添加物は無味のカラメル色素または水のどちらか、もしくは両方のみであり、アルコール度数は40%以上と、大まかに書いただけでも、十分細かい規定をクリアーしたものだけがそう呼ばれるわけです。
そんな伝統的で厳格な基準により、スコッチウイスキーと呼ばれるウイスキーの蒸溜所の中でも、大麦の発芽による麦芽精製から醸造、蒸留、熟成、果てはボトリングまで自社の蒸溜所で一貫して行うというのは、スプリングバンク蒸溜所のウイスキーだけです。多くのスコッチウイスキー蒸溜所の中でも、トップクラスの格式の高い蒸溜所と評価される理由がここにあるのです。
スプリングバンクは、ミッチェル家により1828年に創業を開始した歴史ある蒸溜所(蒸溜所自体はそれ以前からあったようですが)で、今でもミッチェル家代々による経営が続いています。その蒸溜所はスコットランドの小さな港町キャンベルタウンにあります。
キャンベルタウンは、ウイスキー製造のための水や大麦、蒸留に使用する燃料としての石炭などが豊富だったことや、海運に使用できる港があったこともあって、以前は30
を超える多数のウイスキー蒸溜所のあった、スコッチウイスキー産地のメッカ的な存在でした。しかしながら、今はスプリングバンク含め数所の蒸溜所しか残っておらず、必ずしも現在のキャンベルタウンからは、その栄華を感じることは出来ないかもしれません。しかしながら、その中から今に残ったスプリングバンクが、スコッチウイスキーの中でもひときわ輝く存在として未だに君臨しているのが、過去のキャンベルタウンがスコッチウイスキーの一大生産地だったことを思い起こさせます。
そんなキャンベルタウンで操業を続けてきたスプリングバンク蒸溜所は、会社や蒸溜所そのものの歴史だけでなく、その製造過程においても、設備から製法まで創業当時のものの多くを維持したまま、製造を続けています。その長年使用されてきた設備が、スプリングバンク製のスコッチウイスキーの味わいに、深みやスプリングバンク特有の風味を出すことに貢献しているということです。
スコッチウイスキーのシングルモルト(1つの蒸溜所で出来たウイスキー)の中では、スプリングバンクが別格の扱いである理由は、その歴史の長さだけでなく、この頑固なまでにこだわった伝統的な製法にあると言って過言ではないでしょう。1度スプリングバンクで製造されたウイスキーを味わっていただければ、その意味を感じることが出来るはずです。是非、飲んでいただきたいスコッチウイスキーメーカーの1つです。